熟年層の間では毎月分配型のグローバル債権ファンドの人気が高い。このファンドは日本に較べれば高金利の先進国の公社債で運用するもので、安全で金利収入が期待できる。毎月分配金がもらえるので、生活費の足しにもなるし、旅行費としても使える。日本のゼロ金利を考えれば上手い商品であり、熟年層、特に退職者の皆さんが購入しようとする気持ちは十分理解できる。
ただ、懸念がないわけでもない。通常のグローバル債権ファンドは為替ヘッジをしていない。よって為替リスクをまともに受ける。ここ1〜2年の為替レートは「米ドル・円」「ユーロ・円」その他、カナダドル、オーストラリアドル、ニュージーランドドル、何れも外貨高・円安になっており、円安メリットを十分受けている。よって今の外債ファンドは高金利と円安のダブルリターンがあり、どれも高成績で分配金も高い。この過去のパフォーマンスを見て、これから(2006年10月現在)買おうとすると危険である。もし為替が円高に反転すると利益は吹っ飛ぶ。たとえ分配金がもらえたとしても投資元本が大きく目減りする可能性がある。為替リスクについては、私の著書『……安くて豪華に旅する方法』第3章の2を参照して頂きたい。恐るべき為替リスクである。
もう1つの懸念は、毎月分配型のグローバル債権ファンドの手数料が一般的に高いことである。ファンドを購入する時に買い付け手数料がかかり、ファンドを運用してもらうための信託報酬料も毎年かかってくる。投資対象も公社債なので株式と違って利回りは低い。低い利回りから「買い付け手数料」「信託報酬料」「為替手数料」「税金」等が引かれる。本当のところ、実リターンは何%になるか分かったものではない。これに為替の逆風(円高)が襲ってきたらひとたまりもない。
「可能な限り手数料を減らし」「可能な限り為替リスクを減らし」「そこそこのリターンをもらう」。これが私の投資方法で、対象は米国ゼロクーポン債である。ゼロクーポンは金利がゼロの債権で、毎年の利息がない代わりに額面の20%〜30%割り引いた単価で買うことができる。満期まで持てば額面どおりの金額が償還される。つまり、買付金額と償還金額の差が利息となる。アメリカ国債なので信用リスクは最上級のAAA。アメリカ政府がデフォルトを宣言しない限り満期償還される。
米国ゼロクーポン債は世界中の投資家が購入している人気の商品であるが、日本では知名度は低い。証券会社もほとんど宣伝しない。それは、他の外債ファンドと較べて手数料が安く儲からないからである。だから私は勧める。
2000年以降、最近までの世界の長期金利は全般的に低下してきている。この金利低下状況を考えれば、10年満期の米国ゼロクーポン債の利回りが5%あれば悪くない投資対象だと私は思う。
また、日米の為替については昔に較べれば変動幅が小さくなってきており、最近では1ドル100円〜120円の幅で動いている。為替リスクをできるだけ回避する意味で1ドル110円を切って円高になったら米ドル投資を開始してもいいと私は思う。よって、「1ドル110円の為替レートで、利回り5%の10年満期の米国ゼロクーポン債を買う」これが私のお勧めする負けない投資である。
ただし、日米の為替と米国債の金利は別の動きをするので1ドル110円のレートの時、5%の米国ゼロクーポン債を買えるチャンスは少ない。よって、より緻密な外債投資をする場合、米ドルを購入する時期と米国債を購入する時期をずらす必要がある。為替が1ドル110円を切って円高に向かったら米ドルを買い始め、しばらく米ドルのままプールしておく。(証券会社の米ドルMMFに置いておく)そして、米国ゼロクーポン債の金利が5%を越えてきたら自分の米ドルを使って米国債を買う。時期をずらせば2兎を追える。
現実問題として、上記のようなことを実行しようと思ってもなかなかチャンスが巡ってこない。また、日々のマーケット研究も大変である。よって、多くの人が手っ取り早く「外債ファンド」に頼る。退職金2000万円を投資し年率5%で回せば年間100万円、税金を引いても80万円程度の利益になる。これは魅力。みんなやっているし過去の成績もいい。「思い切ってやってみるか?」となる。しかし、老後の貴重なお金である。大きく負けたらそれこそ命が縮む。ここはじっくり腰をすえてまず勉強してみては?
米国ゼロクーポン債にしても外債ファンドにしても高金利の債権は長期投資をすれば実に素晴らしいリターンが得られる。超長期を考えれば株式に劣らない利益が期待できる。債権は利回りが保証されているので、満期まで持てば確実に利益が出る。しかも、複利計算で元本が増えるので長期投資をすれば大きなリターンが期待できる。これを次に示そう。 |