@ はじめに  
     
A 米国ゼロクーポン債投資  
     
B 50歳からはじめる自分年金作り  
     
C 40歳からはじめる自分年金作り  
     
D 30歳からはじめる資産運用  
     
E おわりに  
     
     
     
@ はじめに
   株式投資をはじめれば日経新聞を読むようになり、米ドルやユーロの定期預金をすれば為替変動が気になる。さらに、世界の株式や外国の債権も購入すれば、全世界のマーケットを相手に株、為替、債権投資に参加することになり、世界経済の動きに目が離せなくなる。

 毎日、なんとなく退屈に過ごしている退職者にとって、これ程刺激的な本物のゲームはない。しかも、パソコン1つで毎日楽しめ、経費もたいしてかからない。頭を研ぎ澄まし、日本や世界の経済を分析し、一歩先の動きを予想する。とてもぼけておれない。私が、熟年世代に資産運用を勧めるゆえんである。しかし、退職金を含めて老後の貴重な金融資産を失えば寿命を縮める。ただでさえもう長くない人生、大きなリスクを取る必要はない。そこで、私の勧める投資は「プロに頼らない、流行に乗らない、負けない資産運用」である。

 証券会社はじめ金融機関のお勧め商品は彼らのもうけ商品であって、お客(あなた)のもうけ商品になるかどうかは別問題である。むしろ、金融機関が宣伝しない商品にお客(あなた)のチャンスがある。めんどうなようだが、プロに頼らず、ひたすら勉強して自分でいい商品を探すしかない。プロに頼ると手数料分だけ損をする。また、プロだからといって勝つ保証はない。(プロに頼らない資産運用)
 2005年夏以降日本株は驚くほど急上昇し、それにあわせるかのように本屋の店頭には株式投資の雑誌や新刊本が勢揃いした。株式投資の大流行の出現である。流行に乗ってはじめて株式投資をした人も多いが、その人達は損する可能性が強い。なぜなら流行ができた時には株価は既に天井近くまで上がり、そこからさらに上昇する余地は少ない。本当に儲けた人は、誰も株式の話をしなかった2003年頃、こっそり底値で株を買い、一大ブームになった時に売った人である。(流行に乗らない資産運用)
 大儲けしようとすると大損する。既に退職した人が大儲けしようとして日々の生活資金までも投資に回し、もし失敗したら人生「TheEnd」になる。資産運用は実際にやってみると非常に難しい。負けることもしばしばである。熟年世代にとって一番大事なことは大きく勝つことより負けないことにある。(負けない資産運用)

 生活資金を除いた余裕資産の何割を投資に回すのか?さらに、投資に回すお金のうち「日本株」「日本国債」「外国株」「外国債券」「不動産投資のリート」等、色々ある金融商品の分野別の比率をどうするのか?これを「ポートフォリオ」というが、投資成績はこのポートフォリオの組み方次第で決まってしまうことが多い。ポートフォリオを組むというのは、自分の老後の人生設計を決めることに等しい。よって非常に難しい。さらに、いつマーケットに参加するのか?これも難題である。難題続きであるが、資産運用は他人まかせにせず真剣に取り組む価値があると私は思う。なぜなら、資産運用はあなたの老後の豊かさに直結するからである。

 
     
A 米国ゼロクーポン債投資
   熟年層の間では毎月分配型のグローバル債権ファンドの人気が高い。このファンドは日本に較べれば高金利の先進国の公社債で運用するもので、安全で金利収入が期待できる。毎月分配金がもらえるので、生活費の足しにもなるし、旅行費としても使える。日本のゼロ金利を考えれば上手い商品であり、熟年層、特に退職者の皆さんが購入しようとする気持ちは十分理解できる。

 ただ、懸念がないわけでもない。通常のグローバル債権ファンドは為替ヘッジをしていない。よって為替リスクをまともに受ける。ここ1〜2年の為替レートは「米ドル・円」「ユーロ・円」その他、カナダドル、オーストラリアドル、ニュージーランドドル、何れも外貨高・円安になっており、円安メリットを十分受けている。よって今の外債ファンドは高金利と円安のダブルリターンがあり、どれも高成績で分配金も高い。この過去のパフォーマンスを見て、これから(2006年10月現在)買おうとすると危険である。もし為替が円高に反転すると利益は吹っ飛ぶ。たとえ分配金がもらえたとしても投資元本が大きく目減りする可能性がある。為替リスクについては、私の著書『……安くて豪華に旅する方法』第3章の2を参照して頂きたい。恐るべき為替リスクである。

もう1つの懸念は、毎月分配型のグローバル債権ファンドの手数料が一般的に高いことである。ファンドを購入する時に買い付け手数料がかかり、ファンドを運用してもらうための信託報酬料も毎年かかってくる。投資対象も公社債なので株式と違って利回りは低い。低い利回りから「買い付け手数料」「信託報酬料」「為替手数料」「税金」等が引かれる。本当のところ、実リターンは何%になるか分かったものではない。これに為替の逆風(円高)が襲ってきたらひとたまりもない。

 「可能な限り手数料を減らし」「可能な限り為替リスクを減らし」「そこそこのリターンをもらう」。これが私の投資方法で、対象は米国ゼロクーポン債である。ゼロクーポンは金利がゼロの債権で、毎年の利息がない代わりに額面の20%〜30%割り引いた単価で買うことができる。満期まで持てば額面どおりの金額が償還される。つまり、買付金額と償還金額の差が利息となる。アメリカ国債なので信用リスクは最上級のAAA。アメリカ政府がデフォルトを宣言しない限り満期償還される。
  米国ゼロクーポン債は世界中の投資家が購入している人気の商品であるが、日本では知名度は低い。証券会社もほとんど宣伝しない。それは、他の外債ファンドと較べて手数料が安く儲からないからである。だから私は勧める。

 2000年以降、最近までの世界の長期金利は全般的に低下してきている。この金利低下状況を考えれば、10年満期の米国ゼロクーポン債の利回りが5%あれば悪くない投資対象だと私は思う。
 また、日米の為替については昔に較べれば変動幅が小さくなってきており、最近では1ドル100円〜120円の幅で動いている。為替リスクをできるだけ回避する意味で1ドル110円を切って円高になったら米ドル投資を開始してもいいと私は思う。よって、「1ドル110円の為替レートで、利回り5%の10年満期の米国ゼロクーポン債を買う」これが私のお勧めする負けない投資である。

 ただし、日米の為替と米国債の金利は別の動きをするので1ドル110円のレートの時、5%の米国ゼロクーポン債を買えるチャンスは少ない。よって、より緻密な外債投資をする場合、米ドルを購入する時期と米国債を購入する時期をずらす必要がある。為替が1ドル110円を切って円高に向かったら米ドルを買い始め、しばらく米ドルのままプールしておく。(証券会社の米ドルMMFに置いておく)そして、米国ゼロクーポン債の金利が5%を越えてきたら自分の米ドルを使って米国債を買う。時期をずらせば2兎を追える。

 現実問題として、上記のようなことを実行しようと思ってもなかなかチャンスが巡ってこない。また、日々のマーケット研究も大変である。よって、多くの人が手っ取り早く「外債ファンド」に頼る。退職金2000万円を投資し年率5%で回せば年間100万円、税金を引いても80万円程度の利益になる。これは魅力。みんなやっているし過去の成績もいい。「思い切ってやってみるか?」となる。しかし、老後の貴重なお金である。大きく負けたらそれこそ命が縮む。ここはじっくり腰をすえてまず勉強してみては?

 米国ゼロクーポン債にしても外債ファンドにしても高金利の債権は長期投資をすれば実に素晴らしいリターンが得られる。超長期を考えれば株式に劣らない利益が期待できる。債権は利回りが保証されているので、満期まで持てば確実に利益が出る。しかも、複利計算で元本が増えるので長期投資をすれば大きなリターンが期待できる。これを次に示そう。

 
     
B 50歳からはじめる自分年金作り
   米国ゼロクーポン債は上手く利用すれば自分年金として使える。一般的に50歳くらいになるとマイホームのローンと子供の教育費が重なり、家計は苦しい。しかし、なんとか頑張って毎年100万円程度の投資資金を捻出し、米国ゼロクーポン債に投資する。計算を簡単にするため、為替は1ドル110円、10年満期の債権利回りは5%とし、為替も債権利回りも10年間変わらず毎年同じ商品が買えると仮定する。もちろん非現実的であるが、あくまでも単純化したモデルとして見て頂きたい。さらに、為替手数料、税金等も簡単のため省略する。

 1ドル110円の為替レートで100万円投資して米ドルを買うと約9091ドルになる。(1000000÷110)一方、利回り5%の10年満期の米国ゼロクーポン債の単価は約61.4。(詳細略)この単価の意味するところは、額面の61.4%の値段に割り引いてこの債権が買えるということである。例えば、額面10000ドルの債権が6140ドルで購入できるということで、満期まで持てば10000ドル償還される。よって、その差3860ドルが利息となる。
 上記、100万円の投資で得た9091ドルで、単価61.4のゼロクーポンを買うと額面14806ドルのゼロクーポンが買える。(9091÷0.6140)満期まで10年間持っていれば額面の14806ドルが償還され5715ドルが利息となる。10年間この投資を続けると投資総額は1000万円になる。一方、受け取り総額は15万ドル近い。

 
     
 
年齢
投資金額
(日本円)
投資金額
(米ドル)
満期時の米ドル
50歳
100万円投資
9091ドル
14806ドル
51歳
100万円投資
9091ドル
14806ドル
52歳
100万円投資
9091ドル
14806ドル
53歳
100万円投資
9091ドル
14806ドル
54歳
100万円投資
9091ドル
14806ドル
55歳
100万円投資
9091ドル
14806ドル
56歳
100万円投資
9091ドル
14806ドル
57歳
100万円投資
9091ドル
14806ドル
58歳
100万円投資
9091ドル
14806ドル
59歳
100万円投資
9091ドル
14806ドル
為替レート(1ドル=110円)
 
     
   あなたが定年退職を迎える60歳からゼロクーポン債が満期となり、毎年14806ドルの現金が償還される。満期の時、為替の変動によって受取金額が日本円でどのくらい変わるか以下に示す。  
     
 
満期時の為替 (1ドル)
80円
90円
100円
110円
120円
130円
140円
60歳
118
133
148
163
178
192
207
61歳
118
133
148
163
178
192
207
62歳
118
133
148
163
178
192
207
63歳
118
133
148
163
178
192
207
64歳
118
133
148
163
178
192
207
65歳
118
133
148
163
178
192
207
66歳
118
133
148
163
178
192
207
67歳
118
133
148
163
178
192
207
68歳
118
133
148
163
178
192
207
69歳
118
133
148
163
178
192
207
※単位は万円
 
     
   為替が少し円安になるだけで利益は大きく膨らむ。損益分岐となる為替レートは1ドル67.5円である。(1000000÷14806)これより円高であれば損をする。1ドル67.5円という円高があったとしても10年間も続くとは考えられない。よって、この投資が負ける可能性は極めて小さい。
 60歳から69歳まで毎年150万円〜200万円もらえるとすれば年金の不足分くらいにはなる。米国ゼロクーポン債を利用した自分年金である。日本政府からの公的年金とアメリカ政府からの自分年金を合わせれば豊かな老後が実現する。
 
     
C 40歳からはじめる自分年金作り
   急速に進む少子高齢化と巨大な財政赤字を考えると、普通に考えても日本の年金制度はいずれ崩壊する。もちろん国家のすることだから崩壊する前に対策を講じる。恐らく今以上に年金の支給額を減らし、支給年齢を引き上げるであろう。年金がちゃんともらえるかどうかについて、現在60代の人は完全に逃げ切り、50代の人はぎりぎりセーフと言われている。では40代、30代、20代の若い人はどうなるのか?

 年金については幸運な60代であるが、資産運用を考えると、実はもう遅い。資本主義下において資産は複利で増える。複利で増える最大のメリットは時間である。5年より10年、10年より20年、20年より30年、複利で運用すれば資産は倍増する。年金について不幸な若い世代は資産運用では幸運である。今から時間を十分使える。そこで次は40歳からはじめる自分年金作りを示そう。
 条件は同じ。1ドル 110円の為替で 100万円を投資し、利回り5%の10年満期の米国ゼロクーポン債を買う。これを40歳から49歳まで10年間続ける。投資総額は1000万円である。ただ、実際問題として普通の40代の人が毎年100万円も投資に回せるのか?マイホームを購入して2人の子供を育て、高い生命保険に加入していればそんなお金は出てこない。何かを削らざるおえない。厳しいことを承知で豊かな老後のために以下シュミレーションをする。

 
     
 
年齢
投資金額
(日本円)
投資金額
(米ドル)
満期時の米ドル
40歳
100万円投資
9091ドル
14806ドル
41歳
100万円投資
9091ドル
14806ドル
42歳
100万円投資
9091ドル
14806ドル
43歳
100万円投資
9091ドル
14806ドル
44歳
100万円投資
9091ドル
14806ドル
45歳
100万円投資
9091ドル
14806ドル
46歳
100万円投資
9091ドル
14806ドル
47歳
100万円投資
9091ドル
14806ドル
48歳
100万円投資
9091ドル
14806ドル
49歳
100万円投資
9091ドル
14806ドル
為替レート(1ドル=110円)
 
     
   50歳以降は日本円からの新規の投資をしない。その代わり、ゼロクーポンが満期になったら再び全額、利回り5%の10年満期の米国ゼロクーポン債(単価61.4)を買う。投資金額は 14806ドルなので、額面 24114ドルの債権が買える。(14806÷0.6140)これを50歳から10年間続ける。日本円は必要ないので生活は40代よりらくになる。この投資は40歳から49歳までの頑張りにかかっている。
(最初から20年満期の債権を購入する方法もあるが、超長期債の価格は変動が激しいので、ここでは10年債のみで計算する)
 
     
 
年齢
投資金額(米ドル)
満期時の米ドル
50歳
14806ドル
24114ドル
59歳
14806ドル
24114ドル
 
     
   あなたが定年退職を迎える60歳からゼロクーポン債が満期となり、毎年24114ドルの現金が償還される。満期の時、為替の変動によって受取金額が日本円でどのくらい変わるか以下に示す。  
     
 
満期時の為替(1ドル)
80円
90円
100円
110円
120円
130円
140円
60歳
193
217
241
265
289
313
338
61歳
193
217
241
265
289
313
338
62歳
193
217
241
265
289
313
338
63歳
193
217
241
265
289
313
338
64歳
193
217
241
265
289
313
338
65歳
193
217
241
265
289
313
338
66歳
193
217
241
265
289
313
338
67歳
193
217
241
265
289
313
338
68歳
193
217
241
265
289
313
338
69歳
193
217
241
265
289
313
338
※単位は万円
 
     
   為替が少し円安になるだけで利益は大きく膨らむ。損益分岐となる為替レートは1ドル41.5円である。(1000000÷24114)これより円高であれば損をする。しかし、このレートであれば元本割れは考えられない。必ず勝つ投資法である。満期の時、為替が少々円高になっていても60歳から69歳まで毎年200万円〜300万円程度受け取れる。日本政府からの公的年金が崩壊してもアメリカ政府からの自分年金で何とか苦境を脱するという不思議な状況になる。

 参考までに、利回り5%で30年運用すれば資産は4倍以上に増える。30歳から資産運用をはじめれば定年退職の60歳までにかなりの資産になる。年金に頼らなくても十分な資産ができる。逆に言えば、若い人はそれくらい真剣に資産運用を考えないと豊かな老後は切り開けないのではないか?そこで次は30歳からはじめる資産運用である。超長期の米国ゼロクーポン投資、ここに極まる。

 
     
     
D 30歳からはじめる資産運用
   投資の条件は今までと同じにする。1ドル 110円の為替で 100万円を投資し、利回り5%の10年満期の米国ゼロクーポン債を買う。これを30歳から39歳まで10年間続ける。投資総額は1000万円である。ただ、実際問題として普通の30代の人が毎年100万円も投資に回せるのか?まだ独身の人も多くこれから家庭を築かねばならない。厳しいことを承知で豊かな老後のために以下シュミレーションをする。  
     
 
年齢
投資金額
(日本円)
投資金額
(米ドル)
満期時の米ドル
30歳
100万円投資
9091ドル
14806ドル(9091÷0.6140)
39歳
100万円投資
9091ドル
14806ドル
為替レート(1ドル=110円)
 
     
   40歳から49歳までは日本円からの追加投資はせず、債権が満期になったら再び全額米国ゼロクーポンを買う  
     
 
年齢
投資金額(米ドル)
満期時の米ドル
40歳
14806ドル
24114ドル(14806÷0.6140)
49歳
14806ドル
24114ドル
 
     
   50歳から59歳までは日本円からの追加投資はせず、債権が満期になったら再び全額米国ゼロクーポンを買う。  
     
 
年齢
投資金額(米ドル)
満期時の米ドル
50歳
24114ドル
39273ドル(24114÷0.6140)
59歳
24114ドル

39273ドル

 
     
   あなたが定年退職を迎える60歳からゼロクーポン債が満期となり、毎年39273ドルの現金が償還される。満期の時、為替の変動によって受取金額が日本円でどのくらい変わるか以下に示す。  
     
 
満期時の為替 (1ドル)
80円
90円
100円
110円
120円
130円
140円
60歳
314
353
392
432
471
511
550
61歳
314
353
392
432
471
511
550
62歳
314
353
392
432
471
511
550
63歳
314
353
392
432
471
511
550
64歳
314
353
392
432
471
511
550
65歳
314
353
392
432
471
511
550
66歳
314
353
392
432
471
511
550
67歳
314
353
392
432
471
511
550
68歳
314
353
392
432
471
511
550
69歳
314
353
392
432
471
511
550
※単位は万円
 
     
   損益分岐となる為替レートは1ドル25.5円である。(1000000÷39273)これより円高であれば損をする。考えられない超円高レートなので、これは究極の必勝投資法となる。常識的な為替レートで考えても60歳から69歳まで毎年400万円〜500万円程度受け取れる。さらに、為替が大きく円安に振れると米国債は貴重な財産となる。  
 
1ドル150円では毎年589万円受け取れる
1ドル200円では毎年785万円受け取れる
1ドル250円では毎年982万円受け取れる
1ドル300円では毎年1178万円受け取れる
 
     
   1ドル250円を超えて円安になると毎年1000万円、10年で1億円になる。年金どころか夢の億万長者にもなれる。投資総額は30代で必死に捻出した1000万円だけである。若い時必死で働いて、超長期の投資をする果実は大きい。30年間にわたる複利運用と円安効果の驚くべき結果である。

 実は、為替を抜きにしてもこの投資法はおもしろい。将来外国(特にアメリカ)に住んでみたいと思っている若い人はじっくり研究する価値がある。30歳から米国債に投資して、5%の利回りで30年間運用すると100万円が4万ドル相当になる。アメリカの平均的な家計収入は5万ドル程度なので、4万ドルあれば夫婦2人で、1年間アメリカで遊んで暮らせる。30歳から頑張って10年間投資を続ければ、60歳以降毎年4万ドルづつ満期になる。10年間アメリカで遊べる。実に豊かな老後である。

 
 
(注)
債券投資はインフレに弱い。今後、アメリカが長期的にインフレになると思う人は、私が今まで紹介してきた長期の米国債投資はやめたほうがいい。ただ、私は冷戦終結後のグローバル化した現代において、アメリカの資産(株、不動産等)のインフレはあっても、消費者物価のインフレはあまり起こらないと思う。また、今後の日本とアメリカの国力の差を考えると、為替も長期的には円安になると思う。よって、私は長期米国債を自分のポートフォリオの中心に置いている訳である。
 
     
E おわりに
   アメリカ政府の借金の証書である米国債、これを大量に保有して大丈夫なのか?実は、これは大問題である。アメリカは自分の国で生産するものよりはるかに多くのものを消費している。その差がアメリカの経常赤字で、これをアメリカは自国の株式、債券、不動産、ドル紙幣などを貿易相手国に売却して埋め合わせている。

 近年、アメリカの経常赤字はロケットの発射のごとく激増しており、2005年度は8050億ドル、2006年度は9000億ドルを超すと見られている。1$=115円として100兆円に達する経常赤字である。これだけの巨大な借金をいつまで続けられるのか?よって、常に「ドル暴落説」が出てくる。しかし、ドルは世界の機軸通貨、ドル暴落になると世界が困る。世界中で必死に支えようとする。でも、私は「いつか、何か起こる」と思う。アメリカのデフォルトは回避できるとしても、近い将来かなりのドル安・円高がやってくような気がする。よって、余裕資産を全部米ドル投資に回すのは危険だと思う。

 では、振り返って日本政府はどうなのか?急速に進む少子高齢化の対策は出来ているのか?年金崩壊は防げるのか?先進国で最悪の巨大財政赤字はどうするのか?金利が上がっても財政破綻は防げるのか?等々。冷静に見て日本の将来はかなりやばいと思う。私は「いつか、何か起こる」気がする。
 日本の財政破綻が現実味を帯びはじめた頃、「日本株売り」「日本国債売り」「日本円売り」のトリプル安に見舞われ、世界の金融マーケットの餌食になるかもしれない。もし、日本が本当に財政破綻したらとんでもない円安になる。その時、外貨を持っていれば貴重な財産となる。

 資産運用は日本や世界の将来をどう見るかに深くかかわってくる。滅びる国からお金を引き上げ発展する国に新規投資する。今まで日本は発展してきた。今後も大丈夫なのか?私の著書『……安くて豪華に旅する方法』の第3章の4に「10年後、20年後の日本を、あなたはどう見ますか?」というテーマで詳しく論じてあるので興味のある方は参照して頂きたい。

 投資は通貨分散を基本にし、自分の老後の人生設計に合わせながら「株」「債権」その他、金融商品のポートフォリオを作っていく。言うのは簡単であるが実行は極めて難しい。結局のところ、資産運用は非常に難しく、らくして儲ける方法はない。らくして儲ける方法があれば、それは詐欺である。
お互い詐欺にあわないよう気を付けましょう。

 
 
(2006年11月1日)