「もう一度若返れたら、あなたは何をしますか?」
私は迷わず海外留学をすると思う。残念ながら私の青春時代には海外留学をするお金もチャンスも無かった。今でも学士や修士の資格を取る正規の海外留学は大変である。しかし、短期の語学留学なら難しくない。憧れの海外生活も体験できる。時間とお金に余裕のできた熟年世代が再び海外留学に目を向けるのは自然である。私もいずれやってみたい。
よって、私は海外旅行に出かける時は海外留学の事前調査を兼ねて、可能な限り現地の大学めぐりをする。今回はニューヨークの2つの大学を訪れた。
1831年創立のニューヨーク大学(私立)はグリニッチ・ビレッジの東、ワシントンスクエア・パーク(写真80)の南に位置している。ソーホー、ノリータというお洒落なエリアにも近く全米の高校生に最も人気のある大学の1つであると言われている。ノーベル賞受賞者20人、全米トップ5に入るロースクール、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)のカリスマ(前)議長アラン・グリーンスパンはニューヨーク大学(経済学部)出身で、現FRB議長のベン・バーナンキはニューヨーク大学経済学部の教授であった。名実共に全米屈指の大学である。
地下鉄の「ワシントン・スクエア」駅で下車し、東の方向へ1ブロック歩いていくと茶色のビル(写真81、写真82)が何棟も連なっているのが見える。学部生約2万人、大学院生約3万人、教員約6000人の巨大大学、しかし、「広大な緑のキャンパス」という私のイメージにはほど遠い街の中の大学であった。ワシントンパークの緑の木々がせめてもの救いである。残念ながらニューヨーク大学の環境には全く魅力を感じなかったので、建物の周囲を見ただけで地下鉄の駅に向かう。
ニューヨークの地下鉄に乗ると、時々、ホームでミュージシャン(写真83)に出会う。私は急ぐ旅でもないので上手い演奏であればしばし耳を傾け、チップをあげる。
次に向かった先はコロンビア大学である。1754年創立のコロンビア大学(私立)は全米1のノーベル賞受賞者82名(2006年10月現在)を擁する。日本人初のノーベル賞受賞者湯川秀樹博士もコロンビア大学教授として在任中に受賞した。大学で理論物理を専攻し、湯川秀樹博士のような学者をめざし(挫折し)た私としては記念碑的な大学である。行かねばならない。
地下鉄1番線に乗り「116ストリート」で下車。コロンビア大学の正門(写真84)はすぐ目の前である。門をくぐり、並木の美しい道を東へ進むと広大な芝生が目に飛び込んでくる。「ロー・メモリアル・ライブラリー(写真85)」を中心にして、グリーンの芝生を囲むように大学の建物(写真86、写真87、写真88)が建ち並んでいる。学生達が読書したり昼寝したりして思い思いの時間を過ごしている。いかにも大学らしい風景、コロンビア大学は私のイメージどおりの素晴らしい大学であった。
コロンビア大学の東側にモーニングサイドパーク、西側にリバーサイドパークがあり周辺の環境は抜群である。大学構内を見学した後はリバーサイドパーク方面に少し下り、リバーサイドパークに沿った歩道(写真89)を北に数分歩いていく。周囲には高級コンドミニアム(写真90)が軒を連ねている。「ここにロングステイしてコロンビア大学に通えたら……」などどいうことを夢想しながら「リバーサイド教会(写真91)」に向かう。
1929年完成のリバーサイド教会は実に美しい。早速正面玄関のエレベーターから塔に上がる。展望台からはアッパー・マンハッタン(写真92)やハドソンリバー(写真93)が一望できる。
この日の夜はメトロポリタン歌劇場へオペラを見に行く。コロンビア大学に語学留学すれば、英語の勉強以外に、連日、オペラ、コンサート、ミュージカル、美術館、博物館めぐりが楽しめる。お金さえあればこんなに楽しめる場所は他にはない。実現できるかどうかは別にしてニューヨークに語学留学するならコロンビア大学に決定である。
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