ミュージカルの本場「ブロードウエイ」はタイムズスクエア周辺(写真8)の40近い劇場を総称したもので、そのほとんどが座席数1000を超える劇場である。それらの劇場で連日連夜ミュージカルが上演されている。よって、クラシックのコンサートと違ってミュージカルのチケットはニューヨークに着いてから購入しても遅くはない。(私はお目当ての劇場に行き、空席を見ながらその場で購入した)
5月23日、私は「オペラ座の怪人」を見に、マジェスティック劇場(写真9)に行った。以前、ロンドンで見た時、歌は素晴らしかったのであるが、あまり内容がつかめず、いまいちピンとこなかった。そこで、今回は日本で「オペラ座の怪人」の映画を見て、配役やストーリーをしっかり頭に入れてニューヨーク公演に臨んだ。折角なので、チケット売り場で最高の席(プレミアム席)を買った。代金は150$。1.25$の施設使用料を含めて日本円で約18000円である。(価格帯は65$〜110$)
さすがにプレミアム席、私の席は前から4列目の中央、巨大なシャンデリアの真下であった。クリスチィーヌが、ファントムが私の目の前で歌う。実にうまい。しかも彼らの顔の表情までもが手に取るように分かる。私は完全に「The Phantom of the Opera」の世界に入りこんでしまった。
5月下旬はアメリカの学校が休みになるシーズンと重なっているためか、若い男女が大挙してミュージカルを見に来る。さらに、この日は水曜日のマチネ(昼の公演)だったためか観客の8割近くが若者であった。彼らは感動を素直に表す。ファントムが嘆き悲しむ場面では女の子達からのすすり泣きが聞こえてきた。私も泣けた。そして、最後には、全員スタンディングによる熱狂的な拍手!私も立ち上がって熱烈な拍手を送った。
クラシックのコンサートであれば後方の安い座席でもいい。むしろ2階席、3階席の方がオーケストラ全体の音楽が楽しめる。しかし、ステージ上で繰り広げられるミュージカル、オペラ、バレエ等は出来るだけステージに近い中央の席がいい。臨場感がまるで違う。今回はこのことを痛切に感じた。
プレミアム席は当然ながら料金が高い。しかし、何事にも裏があるようで、私の席の隣の中年のアメリカ人夫妻は、当日の朝、インターネットで半額の値段でこの席のチケットを買ったという。どうやら当日の売り尽くしセールがネット上であるらしい。
「プレミアム席は売れ残る場合が多いから、狙い目だわよ」
と、その中年のご婦人は語っていた。こういうサイトも使いこなせれば、ニューヨークに滞在しているホテルから、モーニングコーヒーを飲みながら、見たいミュージカルのプレミアム席をねらい打ちするという芸当もできる。安くて豪華に旅する最上級編ともなる。
|