@ 田ノ上建輔さん
クルーズ6日目になっても日本人に出会わない。私は日本語が喋りたくなったので、フロントへ行き「日本人客は乗っていないか?」と聞いてみた。そしたら、日本人客はいないが「ケン」がいるよ、という返事だった。ドーンプ・リンセス号に日本人クルーがいた。名前は田ノ上建輔(写真102)さん。鹿児島県出身、27才のフロントマンである。スタッフから「ケン」「ケン」と呼ばれ親しまれている。
彼はニュージーランド北島にあるカレッジ(ホテルマネージメント専攻)を卒業し、昨年、プリンセスクルーズに就職。ドーン・プリンセス号が彼の初仕事である。ひっきりなしにかかってくる電話に素早く応答し、的確に仕事をこなしていく。もちろん全部英語である。頑張れケンさん!
A セラ・コルジョさん
私のお気に入りの場所が、フロント・ロビー階にあるラウンジ「パティセリ」(写真103)である。私はここで「プレミアム・コーヒー・カード」(約3000円)を購入。このカードでカップチィーノ(写真104)、カフェラテ、エスプレッソ等、プレミアムコーヒーが15杯分注文できる。もっともレギュラーコーヒーとお菓子は無料なので、カードを購入しなくてもこのラウンジで優雅なティータイムが過ごせる。
私は毎日パティセリに通っているいうちに、ウエイターの「セラ・コルジョ(写真105)」さんと親しくなった。彼はウルグアイ出身の32才、元高校の音楽教師で、ドラム、作曲もこなすミュージシャンでもある。母国語はスペイン語であるが、6才の時から公立学校終了後に私立の英語学校に通い、英語とコンピュータをマスターしたという。大学院で修士号を取るための資金稼ぎのためにプリンスに乗船している。将来は大学の先生か有名なミュージシャンになりたいと夢を語る。
私は毎日この席(写真106)に座りプレミア・コーヒーを味わいながら日記を書いた。夕方になると、ラウンジ近くのグランドピアノからピアニストの生演奏がはじまる。甘いデザートを口に頬ばりながら香りのいいコーヒーを味わい、海を眺め、ピアノの音楽に酔う。私のお気に入りのラウンジである。
B カオル・ボイントマンさん
いつものように夕方、フィットネスクラブで日本語のガイドブックを見ながら自転車をこいでいたら、隣の御婦人から声をかけられた。しかも、日本語で……。彼女の名前は「カオル・ボイントマン」。元全日空のスチュワーデスでアメリカ人のボイントマンさんと結婚して現在アメリカのフェニックスで暮らしている。
早速、3人でビュッフェレストランに行き、ティータイム(ケーキ付き)にする。久しぶりの日本語で、時間を忘れてお互いの人生を語り合った。かおるさんから、怖い話を1つ聞いた。
ドーン・プリンセスがカボ・サン・ルーカスを離れる時、30分くらい遅れたが、女性客数名をカボ・サン・ルーカスに残して出航してしまった、という。 「その後、女性達はどうなったのか?」と聞いてみたら、「誰も知らない。恐らく、何かのトラブルに巻き込まれたのではないか?」という返事。Tシャツ、短パン、サンダル履きで、わずかな現金だけを持って、1人、見知らぬ外国の地に取り残されたら…。考えただけでもゾットする。寄港地の遊びはほどほどにして、余裕を持って客船に帰るべし!
C ジニー&ブライアン夫妻
フィットネスクラブに行くと、同じ顔ぶれのゲストに会う。その中で、私はワシントン州在住の中年のアメリカ人夫妻ジニー&ブライアンと親しくなった。彼らは非常にユニークな人生を送っているようだったので、私から誘って彼らと昼食を共にした。
ジニー(妻)は看護師、ブライアン(夫)は医師。夫婦でヨーロッパをサイクリングで回ったり、地元ではスキー、ハイキングをし、メキシコではスキューバダイビングをするという。私と趣味が似ている。アメリカの医者夫妻なのでリッチで、忙しい生活を送っているだろうなと想像しつつ色々質問してみた。
ブライアンはファミリードクターで週2日間しか仕事をしない。後の5日間は休み。何と週休5日制である。ジニーもパートタイムの仕事で、お互いにたっぷりの自由時間を確保して夫婦で遊ぶ。しかし、医者と言えども週2日の仕事では収入が少ない。そのかわり、彼らは家を買わず、安いアパート($500/月)に住み、子供もいない。つまり、支出も少ない。無理して高額なマイホームに飛びついた「サブプライムローン」層とは無縁である。
彼ら自身、非常にまれなアメリカ人と言っている。遊び上手な彼らでさえ、クルーズは2回目で、クルーズがこんなに安いものだとは知らなかったという。アメリカ人医者夫妻でも一番安い「インサイド」客室で寝泊まりしている。彼らから見れば1人でバルコニー客室に乗っている私は、まさにリッチな日本人?
見知らぬ外国の人との偶然の出会い、これも海外クルーズの醍醐味である。
|